第3回 高専の「メリット/デメリット」は表裏一体

高専の「メリット/デメリット」

レポートに追われる日々

○実験、実習の時間数が多く、座学の内容の理解を深めることができる
×高学年になると毎週、毎週、実験レポートに追われる
低学年から実験や実習を実施するのが高専の特長です。当然、実験・実習の後にはレポートを作成する必要があります。レポートを作成するには、実験データや教科書、参考文献と、にらめっこしなければなりませんので、座学の内容をより深く理解することができます。

一方で、実験や実習の時間が多いということは、提出すべきレポートの数が多くなるということですので、結構大変です。沖縄高専でも学生同士で過去レポートが回ってみたり、レポートが何通溜まってるなんて話をするのかもしれませんね。

ちなみに、筆者の高専生活で、強く印象に残っているのがこの実験レポートに作成です。寮の消灯時間は24時でしたので、24時過ぎると部屋は真っ暗に……。カーテンを開け、外灯の光でレポート書いたり、深夜も明かりがついている洗濯室の洗濯機の上でレポート書いてみたりと必死でした。あのレポート作成が後々、さまざまな場面に役立っているような気がします。

博士号を持った教官による教育

○教官は博士号を持った人がほとんどで、専門的な話を早いうちから聞ける
×教員免許をもっている教官は少ないので、教え方のうまい、下手に個人差がある
沖縄高専の教官公募のページを見ていただくと、募集要項に「博士の学位を有する方」と一番最初に書いてあります。高専は大学と同じ高等教育機関ですので、教官には博士の学位が求められます(最近は特に、JABEE申請や専攻科の設置増といった流れがありその傾向は非常に強まっています)。

博士の学位を取るためには、一般的に大学院で少なくとも5年、1つのテーマで研究を続けますので、そのテーマを世の中で一番知っている人と言えるでしょう。しかし、高専の教官になるには、高校や中学の教員に就くのに必要となる教員免許は不要です。高専の各授業の教育方法は、教官それぞれで、各教官がこれまでに受けてきた授業方法に依存すると言っても過言ではありません。

「教え方がうまい」ということと、「内容に深みがある」というのは、全くの別物です。教官の持つ専門知識をうまく吸収することは、受け手の問題、すなわち学生のやる気や質にも大きく関係するのかもしれません。授業は、学生と教官の相互作用で作り出すものではないでしょうか。深い専門知識を持つ教官から、大学と比較して心理的に近い距離で授業を受けられるというのは、高専の大きな特長だと私は考えています。

進学、就職、進路変更……

○比較的に就職、大学編入がしやすい
×入学した後、進路を変更するのが難しい

よく高専の説明会などでは就職率が良いという話をすることが多いようです。これは、嘘ではありません。しかし、高専からの就職の場合、働く内容や職種が制限されますので注意が必要です。例えば、最近の傾向だとエンジニアリング分野の大手企業において研究・開発職に就くには、理系の場合は少なくとも大学院の修士課程を出ないと難しくなってきています。高専を出て、研究・開発職に就こうとすると、中規模、小規模の企業に限られると考えた方がよさそうです(IT分野では、様子が違っているかもしれませんので、エンジニアリング分野のお話と考えてください)。

10年ほど前から顕著になっているのが、高専卒業後に就職するのではなく、大学の3年次に編入学するという進路です。現在では、大学の工学部への編入学も、かなり門戸が開かれてます。筆者の感覚では、しっかりと学生生活を送り、まじめに普通に勉強するなら、普通高校から大学に入学するよりも高専の方がスムーズに国立大学に入学(編入)できると感じます。特に、長岡技術科学大学、豊橋技術科学大学は、高専からの編入学者を受け入れるために作られたような大学院大学ですので、しっかりと高専生活を送るなら、このような技科大への進路が広く広く開かれています。

こういった就職率の高さ、大学への編入のしやすさというメリットの一方で、高専に入学した後、ちょっと違うぞ……、想像と違っていた……と感じたときに、進路を変更するのは大変です。入学してすぐであれば、退学し、1年後に普通高校を受け直すことになります。高専の3年次が終わった段階で、大学1年次に入学することも可能ですが、高専のカリキュラムが大学入試をまったく考えていない内容ですので、高専3年で他大学の試験を受けるには、自分自身で勉強しなければなりません。

>>結局のところ、高専という環境を楽しめるかは……