巻頭言―なぜ今、沖縄に注目すべきか?―

なぜ今、沖縄に注目するのか? 沖縄は、日本の首都東京から南に遠く離れた島で、しかも経済的な規模を見てもけっして大きいとは言えません。しかし、これから日本が抱えるであろうさまざまな問題を考える上で、「沖縄」という地域・文化が非常に大切になってくるのではないか、そう考えています。具体的には、(1)日本が今後抱えるであろう問題や課題を考える上でのリファレンスとしての沖縄、(2)日本の閉塞感を打破するためのヒントとしての沖縄に意味があると考えます。

日本のリファレンスとしての「沖縄」

  • 日本と米国、さらには中国、台湾、韓国との関係性
  • 失業率の高さ
  • 高齢化社会への対応
  • 社会福祉の充実

このように、日本がこれから抱えるであろう問題を考えるとき、今現在、沖縄が抱えている問題であり、沖縄が前線となっている問題であることに気が付きます。「島尾敏雄 新編・琉球弧の視点から 朝日文庫」には、次のような一文があります。これは、今の沖縄にとって、とても意味のある一文ではないでしょうか。

日本の歴史の曲がり角では、必ずこの琉球弧の方が騒がしくなるといいますか、琉球弧の方からあるサインが本土の方に送られてくるのです。そしてそのために日本全体がざわめきます.それなのに,そのざわめきがおさまってしまうと、また琉球弧は本土から切り離された状態になってしまうという、何かそんな気がして仕方ありません。

沖縄の今に注目し、課題に向き合うことは、日本全体が今から抱えるであろう課題解決に取り組んでいることだと考えます。

閉塞感を打破するきっかけとしての「沖縄」

2つ目の日本の閉塞感を打破する「活性化」という観点でも、沖縄に大きなヒントが隠れているような気がしてなりません。「失業率が高く、出生率が高く、離婚率も高く、所得が低く、学力も低い(全国最低)」という目も当てられないような社会状況にありながら、沖縄に住んでいると、そのような重苦しさはありません。影に隠れて見えないだけかもしれませんが、日々の生活を明るく過ごし、互いにコミュニケーションを楽しむという姿があり、何よりこの沖縄という土地に住むことに対する誇りがあります。それは、なぜなのでしょうか?これからの地域や日本を考える上で、この点を探っていくことは大切なことではないでしょうか。

ますます、地域の情報発信が大切になる時代へ

ちぶりあん沖縄メディアを通して主張したいことは以下の通りです。

  1. 地域活性化のためには、「人」や、「モノ」、「価値」の流通が不可欠。それを下支えし、行動のきっかけ作りとなる「情報の流通(発信)」の役割が、今後ますます重要になる。全体に対する地域の情報発信戦略を構築していく必要がある。
  2. 日本が抱える問題の縮図が、今の沖縄に詰まっている。例えば、米国との関係、高齢化、給与格差、教育、社会保障(セーフティネットの枠組み)など。沖縄で表面化している問題は、ゆくゆくは日本で顕在化することである。
  3. 「青い海」、「青い空」、「リゾート」、「癒し」、「スローライフ」という言葉で語られるイメージは、例えそれが事実だとしても、沖縄が自ら作り出したメッセージではない。沖縄の人自身が、いつの間にか負の部分(高い失業率、高い離婚率、所得の低さ、学力の低さなど)を、与えられた耳触りの良いイメージによって無意識に隠してしまっているのではないか、という問題提起をしたい。。「まぁ、なんくるないさ(どうにかなるさ)」という反応ではなく、「こりゃいか・・・・・・、まずいよね」という姿勢で、直視すべきではないか。
  4. 経済振興を妨げているのは、オープンなように見えて、実は保守的・排他的な側面を持つ社会風土。もっと、県外(いわゆる内地の文化や人)に対する、心理的な障壁を下げる必要があるのではないか。「ナイチャー、ヤマトンチュ」という言葉はもう使わないでおこう、という問題提起をしたい。
  5. 沖縄の米軍基地の問題を、県外の人が理解できないのは、ごくごく当たり前のこと、という事実を出発点にしよう。これには、沖縄とそれ以外の県への情報流通のハードルという問題が隠れているという問題提起をしたい。「沖縄タイムス」や「琉球新報」はといったローカルメディアを毎日見ていると、掲載された内容を全国の人に分かってもらっているような気になってしまうが、県外でこのような媒体を見ている人はごくごく少数。従って、沖縄で起こっていることは、ほとんど県外には伝わっていない(在京の大手メディアに取り上げられる場合を除き)。県内情報に対する、沖縄県とその他の県の意識の差が、「なんで沖縄の米軍基地の現状を分かってくれないのだ・・・」という感情につながる。観光や社会問題など含め、県外への情報発信戦略が、現在の沖縄の最大の課題であることを問題提起したい。
  6. 「まぁ、今のままでいいでしょ」、「今の状態の何が問題なの」という指摘もあると思うが、特別に国から与えられている予算や振興策が無くなったときに、今の社会を維持できるのか、そこが問題であると考える。今のうちから、「地域の自立」に向けた準備をしておく必要があることを問題提起したい。

ちぶりあん沖縄メディアでは、「沖縄の今と未来への潮流を発信する地域情報メディア」をコンセプトに掲げ、日本の南の果て沖縄から「地域活性化」と、「地域の情報発信」の姿を探ります。日本に漂う閉塞感を打ち破るには、何が必要でしょうか。それは、日本の中に地域という多様性が、アクティブに動き出すことだと考えます。地域が元気になるには、「人」や、「モノ」、「価値」の流通が不可欠です。ちぶりあん沖縄メディアでは、「人」や、「モノ」、「価値」の流通を下支えし、行動のきっかけ作りとなる「情報の流通(発信)」の役割に焦点を当てていきます。

2013年7月1日 ちぶりあん沖縄メディア 管理人