自由自在に動かせる、人間が乗れるロボットを作りたい――。誰しもが小さいころに思い描いていた夢を実現しようと日々開発を進めているのが、スケルトニクス株式会社だ。沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)出身の白久レイエス樹氏、中野桂樹氏、阿嘉倫大氏の3名が、2013年10月に立ち上げた。
同社が目指すのは、新技術を世の中に広めるトリガー役となること。かつて、飛行機を初めて開発したライト兄弟のモチベーションが「飛びたいから」であったように、同社も好奇心と興味をモチベーションに、「今までにない」の実現を追いかけている。2013年11月に沖縄こどもの国ワンダーミュージアムで開催された「ロボトモ展」でメンバーに話を聞く機会を得たので、創業の経緯や同社の強みをご紹介しよう。
バランスを取り、形に落とし込む「実装力」に強み
スケルトニクス株式会社の前身である「チームスケルトニクス」の活動は、2010年8月にさかのぼる*1)。チームスケルトニクスの名を世の中に広めたのが、チーム名の由来になっているスケルトニクスの開発だ。
スケルトニクスとはあまり聞きなれない言葉だが、「骨格(スケルトン)」と「構造(メカニクス)」を組み合わせた造語のこと。骨格や構造という言葉が示す通り、人間の骨格に合わせて設計したメカニクス(マシーン)のことを指す。搭乗型外骨格や外骨格スーツとも表現される。
同チームが開発したスケルトニクスは、動力を使わず、人力でマシーンを動かす。パンダグラフをうまく活用し、人の動きを大きく拡大させて動くマシーンの姿は、迫力がある。白久氏ら3名はいずれも、沖縄高専の機械システム工学科の出身。創立間もない沖縄高専をロボコン全国大会優勝に導くなどのロボット開発の経験をもとに、スケルトニクスの開発に取り組んだ。
「ひとつのパーツだけを見ると、たいした技術ではないかもしれませんが、複数のパーツを組み合わせ、バランスの取れた最適な形として作り上げる実装力が強みです」(同社)という。例えば、人間が動かすマシーンであるスケルトニクスを製作するには、機械強度や重量、可動範囲といった、トレードオフの関係にあるさまざまな観点のバランスをうまく取らなければならない。
この他、回路設計と機械設計の両方に長けていることも特徴に挙げる。例えば、あるロボットを製作する際、センサー、アクチュエーター、コントローラーといった電気的な制御機構の中に、機械的な仕掛けをうまく介在させ、システム全体をシンプルにすることが得意だという。
アニメに見たロボットの世界の実現へ
現在、スケルトニクス株式会社が開発に取り組むのが、「がちゃがちゃと変形し、そのまま移動できる」をコンセプトにした動作可変型スーツ(「エグゾネクス」と命名)である。これまでのスケルトニクスは人力で、長い時間動かし続けるのは難しかったが、動作を電力アシスト化(パワード化)することで、それが解消されることになる。まさに、アニメに見たロボットの世界の実現だ。
2013年11月現在、白久氏は東京大学生産技術研究所、阿嘉氏は首都大学東京ヒューマンメカトロニクスシステムコース、中野氏は沖縄高専の機械システム工学科にそれぞれ在学中。「ずっとロボット開発を続けていたいから、チームスケルトニクスを法人化した」という。沖縄発、沖縄初のロボットベンチャーの今後の活躍を応援したい。
脚注
*1)スケルトニクス株式会社のWebサイトによれば、同社を立ち上げた3氏の他に、玉城光輝氏と高安基大氏が、チームのメンバーとして参画していた。