10年目の沖縄高専への提言~人材を還流する仕組みを如何に構築するか?~

10年目の沖縄高専への提言

沖縄工業高等専門学校(沖縄高専)は2013年9月、創立10周年記念式典を開催した。沖縄高専の沿革によれば、開学は2002年10月、第1期生を迎えたのは2004年4月であるから、2013年は第10期生が入学した節目の年となる。

本Webサイトでは、沖縄の今後の地域振興に重要な役割を担う沖縄高専に焦点を当て、幾つかの記事を掲載している。筆者は、沖縄高専の関係者ではない。今から10年以上前に県外の高専に進学し、現在沖縄で就労しているという経験から、「10年目の沖縄高専への提言」と題し、これからの沖縄高専への提言をまとめてみたい。

大きな成果を上げてきた10年間

まず、沖縄高専のこれまでの10年は、大きな成果を上げた10年だった。「全国ロボットコンテスト」、「プログラミングコンテスト」といったコンテストで、古くからある高専に一歩も引けをとらず、優秀な成績を上げてきた。沖縄高専のニュースを見れば、これらのコンテストのみならず、さまざまな活動を活発に推進していることが伺える。進学先や就職先をみても、学力が全国で最低レベルにある「沖縄」を意識させない内容になっている。

以上を踏まえつつ、沖縄高専が沖縄の産業界でさらに存在感を発揮し、沖縄の地域振興に貢献するには何が必要だろうか?それには、3つのポイントがあると考える。

県内と県外の人的移動・交流の促進を!

まず1つ目の提案は、県外に就職または進学した学生が、将来的に沖縄に戻ってこれる基盤、仕組みを早急に構築することである。沖縄高専は産業界の強い希望で設立されたという。沖縄高専の学生が産業界に貢献する最大の方法は、(沖縄県外の)その分野で第一線の企業に就業し、そこで培った知見を沖縄に還流することだ。そう考えたとき、現在の状態は、県外に出た後の受け皿がほとんどない状態に見受けられる。

対策が急がれるのは、「機械システム工学科」や「情報通信工学科」の分野のように感じる。例えば、情報通信工学科の授業科目を見ると、電気回路、電磁気学、通信工学、集積回路といった言葉が並ぶ。このような授業を活かせる県内企業は極めて少ない。機械システム工学科もしかりである。これらの学科で学び、大学へ編入し、学業で学んだ知識を社会人としても突き詰めていきたいと考えたとき、「沖縄」はとてつもなく、遠い存在になってしまう。

将来、沖縄のために貢献したいと思う学生が、県外へ就職または進学する際に、「もう将来、沖縄に戻ってこれないかもしれない、片道切符になるかもしれない」という想いで沖縄を離れることほど、不幸なことはない。沖縄を離れ、勉学に励み、就業した学生が、その分野で沖縄に貢献できる道筋を作ることが、沖縄高専の意義を最大限発揮することにつながると考える。

単位互換の早期実現を

2つ目の提案は、琉球大学工学部との単位互換を早期に実現することである。琉球大学 工学部の学生にとっては、実験や実習に強い沖縄高専の学生との交流は刺激になるだろう。一方で、沖縄高専の学生にとっても、将来一緒に働くであろう大学生との交流は重要だ。寮生活にしばられない、点呼もない、数多くの教養科目が開講されている、そんな大学の雰囲気は視野を広げることに役立つはずだ。

学生/沖縄県に向けた強いメッセージ発信を!

最後の提案は、エンジニアリングの分野の高等教育機関である沖縄高専の存在が、沖縄にとってどのような意味を持つのか、学生に対して、そして沖縄のさまざまな人に対して強いメッセージを発信することである。そもそも、高専制度は、高度成長期に不足していた中堅技術者を短期間に育成することを目的に誕生した。高度成長期が過ぎ、高専は制度疲労を起こしているという指摘もある。そんな中で、沖縄高専が沖縄に誕生した意義はどこにあるのだろうか。

機械システム工学科、情報通信システム工学科、メディア情報工学科、生物資源工学科は、沖縄になぜ必要なのか? 50年後の沖縄を見据え、強いメッセージを発信してほしい。「何だかよく分からない専門学校が、辺野古にあるみたい」。10周年を迎えた沖縄高専は、そんな声を聞く段階から次のステップに進むタイミングにきている。