LED通信や情報伝送システムの研究も、沖縄産業振興公社が研究発表会を開催

沖縄県産業振興公社と沖縄県は2014年2月25日、「おきなわ新産業創出投資事業」の研究成果発表会を開催する。平成24年度に本事業に採択された企業が、2年間の研究開発の結果を紹介するもの。場所は沖縄産業支援センターで、時間は13時30分~17時30分まで。入場は無料。

株式会社VLCと共栄エンジニアリング株式会社に注目

今回、バイオやIT、環境といった沖縄の重点事業に関連した8社が登壇するが、情報通信やエレクトロニクスという技術領域で興味深いのは、株式会社VLCと共栄エンジニアリング株式会社の発表だ。

株式会社VLC(本社:沖縄県)は、LED通信や電力線通信の技術開発を手掛けるアウトスタンディングテクノロジーのグループ会社。CEOは新城浩一郎氏、研究開発をけん引するCTOは、アウトスタンディング社のCTOである黒川裕之氏が兼任している。今回、株式会社VLCは「LED通信の高度化を実現する要素技術開発」というテーマで、おきなわ新産業創出投資事業の支援を受け、研究開発を進めた。

LED通信(VLC:Visible Light Communication)とは、普及が進むLED照明の光を変調させて情報を伝送する技術のこと。可視光という性質上、見通し内の通信に制限されることや太陽光などの周囲の光源の影響を比較的受けやすいという弱点があるものの、通信範囲が視認できるため直感的に情報を伝達できたり、指向性が高いといった特徴がある。

日本発の要素技術として、可視光通信コンソーシアム(VLCC)を旗振り役に、2000年代前半から複数の企業や研究機関で開発が進められてきたが、可視光ならではのキラーアプリがはっきりとせず、市場は立ち上がっていないのが現状だ。このような市場背景の中、同社が研究テーマに挙げた「LED通信の高度化を実現する要素技術開発」の“高度化”が何を意味するのか注目したい。

株式会社VLCでは以下の項目で研究開発を進めた(沖縄県産業振興公社のWebサイトより引用)。

・LED通信専用の下記要素技術を確立し、競争力のあるキーデバイスを開発する。
*受光器の高性能化(光電変換効率の世界最高記録:0.88A/W更新)
*受光器の小型化(携帯端末に搭載可能なサイズ:3mm角)
*電気と光の効率的な相互変換、高速で歪とノイズの少ない信号処理と増幅回路

共栄エンジニアリングの「双方向多媒体通信技術」とは?

一方の共栄エンジニアリング株式会社(本社:新潟県)は、「双方向多媒体通信技術を応用した情報伝送システムの開発」というテーマで研究を進めた。

双方向多媒体通信技術という言葉は、エレクトロニクスや情報通信分野で一般的に使われている言葉ではない。そもそも通信技術は、基本的に「双方向」であるし、通信における「媒体」とは送信側と受信側の間にある伝搬路を指す。まず、双方向多媒体通信が何を指す技術なのか注目したい。同社が挙げている研究項目は以下の通り(沖縄県産業振興公社のWebサイトより引用)。

1. 通信電極の材料・形状において、商用に耐えうる高い耐久性(壊れない/錆びない)の実現。

2. 双方向通信におけるデータと通信レートの最適化(理論レイヤーを除き400kbps以上)

3. 通信及び他機能における低消費電力化(無線通信部を除き10mW以下)

4. コミュニケーションIDタグのバッテリーにおいて、メンテナンスフリー化の実現。
5. 商用実用化に向けた無線規格の確立。

なお、共栄エンジニアリングは、沖縄に本社を構えるレキオ・パワー・テクノロジーと「非接触電力伝送と高速データ通信を共存させる技術の開発・施策」というテーマで共同開発を進めている。双方向多媒体通信技術と、非接触電力伝送や高速データ通信がどのように関連するのか興味深い。

バイオやIT、環境の合計8社が登壇

なお、今回登壇する全ての企業名と発表タイトルは以下の通り。

【バイオ分野】

  • 株式会社沖縄リサーチセンター「シークヮーサー絞り残渣とギシギシ根を活用したスキン・ヘルスケア機能性素材の研究開発」
  • 沖縄ハム総合食品株式会社「過熱水蒸気による亜熱帯植物資源からの有用成分の包括的分離抽出と高度利用化」
  • 株式会社ボナック「HP1γ等をターゲットとした肺がん治療薬の開発に向けた研究」

【IT分野】

  • 株式会社VLC「LED通信の高度化を実現する要素技術開発」
  • 株式会社サイダス「定量データ人材情報の活用による従業員パフォーマンス向上手法」
  • 株式会社アイディーズ「ビッグデータを活用した商品の共通コード化の研究」
  • 共栄エンジニアリング株式会社「双方向多媒体通信技術を応用した情報伝送システムの開発」

【環境分野】

  • 株式会社バイオ水素技術研究所「糖蜜を原料にした発酵水素生産による電力供給システムの研究開発」